高瀬舟という小説があります。森鴎外の小説です。読んだ人も沢山いると思います。小生も昔に読みました。細かい詳細は忘れましたが、現代、問題になってる安楽死なんかに通じる話です。
高瀬舟という京都の罪人を流刑にするため高瀬川を下る舟が高瀬舟です。舟で護送役と罪人喜助の対話が主軸の話です。
もともと、喜助は弟と母親と生活してました。母親を流行病で亡くします。喜助と弟、二人で生きてましたが、弟は病気で働けない体になりました。その後は喜助は弟を介護しながら働いてましたが、ある日、弟は「兄に迷惑をかけれない」と思い刃物を自身の喉に突き刺しますが死にきれませんでした。そうこうするうちに喜助が、その状況を目撃します。弟は「どうせ死ぬし、刃物を抜いてくれれば、すぐ、死ねるから抜いてくれ。」と言われ、結局、弟の言う通り刃物を抜いて弟は死にました。それを近所の人に目撃され喜助は逮捕されました。護送役は高瀬舟の上で喜助のこの話を聞いて、これが、いったい犯罪なのか?自問自答する内容でした。
現代でいうと自殺幇助になることでしょう。基本的に小生は自殺は悪であり卑怯で格好悪いという考えですが、弟の思いもわかります。弟が自分で刃物を抜く余力が残ってたら自分で完結できて話が違ってたように思います。
この状況では兄も刃物を抜くことで苦しむ弟を楽にすることができると考えたと思います。小生個人的意見はこの時、兄の喜助は死にたい弟の感情を尊重せず、医者などを呼ぶ方向に動くべきだったと思いますが、そんなことを言うと、「おまえは介護とかしたことがあるのか?どんなに大変か知ってるのか?」と言われると、小生、何も言えません。ただ、小生は非情であるかも知れませんが自殺や自殺幇助は悪であると思いたいです。
(医者でもある森鴎外)
森鴎外は1916年にこの小説を書いてます。高瀬舟は100年ちょっと前ですが、それ以前、平安時代なんかでも、「姥捨て山」という話があったかなかったかという話です。平安時代なんて、ざっと、1000年前です。
(楢山節考 1958)
現代においても、このような話はよく聞きます。ニュースで事件にもなっております。
藤原宏被告(82)2023は2022年11月、町内の港で足が不自由な妻の照子さん(当時79)を乗っていた車いすごと海に突き落として殺害したとして殺人の罪に問われました。
検察は「1人で介護することが困難な状況だったが、『最後まで自分が面倒をみる』という自己中心的な考えから、周囲のサポートを受け入れなかった。典型的な介護疲れとは異なり、身勝手な考えによる殺人で、死を望んでいない被害者の将来を奪った結果は重大だ」と主張していました。
一方、弁護士は「およそ40年にわたって献身的に介護するなど、被害者のために人生を尽くしてきたが誰にも相談ができず、精神的に追い込まれていた。介護疲れによる殺人で、執行猶予付きの判決が相当だ」と主張していました。
結局、懲役3年となりました。
国が余計な卑怯な人間に生活保護を与えたりするんじゃなく、こっちにまわしたら、いいのにと思ってしまいます。懲役3年とういう短さからいうと、司法は藤原被告に同情のほうが大きいのが伺えます。
埼玉県の山根レイ子被告(71)2009 懲役5年
山根被告は08年12月25日未明、自宅アパートで夫(当時78)を抱え、トイレに連れていった。ところが夫は途中で倒れ込み、失禁した。数時間前にも失禁して着替えさせたばかりで、「もう手に負えない」とスカーフで夫の首を絞めて殺害した。山根被告自身も包丁で手首を切るなどしたが、朝になって親族に発見された。
公判で明かされた経過では、07年8月に夫が大動脈瘤(りゅう)で倒れて一時入院し、2人で経営していた焼き鳥店を閉めた。その後、夫の具合は悪化し、事件4日前ごろには、山根被告は介護のために、ほとんど眠れない状態になっていた。行政に相談しなかった理由を尋ねられた被告は「考えてもみなかった。知らなかった」と答えた。
月並みのことを言えば、もちろん、小生、山根レイ子被告の気持ちは分かります。同情もします。しかし、夫が倒れてから、一年、ちょっとで、この惨劇は早すぎるんじゃないかとも思います。山根被告も気がおかしくなってたのでしょう。それは理解できます。しかし、やはり小生は殺人、自殺には反対の姿勢をとりたいです。前述の藤原被告もそうですが、行政に相談しなかったのが問題です。親族の人達も、行政に相談したり何かできたはずです。偉そうにすみません。山根レイ子被告は多分、今は出所してることと思いますが、今、どこでどうしてるかの記事は見当たりません。
娘に介護を任せて迷惑をかけるのは心苦しかった岸本政子被告(72才)2021 懲役18年
2019年11月、福井県敦賀市の民家で殺人事件が発生した。介護をしている義父母(当時93才と95才)と夫の太喜雄さん(同70才)を殺害したとして、妻である岸本政子被告(72才)が逮捕された。岸本被告はまわりからも家族思いのいい人と思われてました。
検察側から『周囲に助けを求められなかったのか』と尋ねられると『私の性格上、できませんでした。娘に介護を任せて迷惑をかけるのは心苦しかった』と答えて、亡くなった3人に対しては、『3人は最後まで生きたかったと思う。やってはいけないことをした』と後悔をにじませました」
義弟は被告について『岸本家にとって大事なかた。処罰してもらいたくない。早く帰って来てほしい』と声を震わせました。義妹も『私たちが早く気づいていたら……処罰は望みません』と語っています」
(岸本政子被告の自宅)
やはり、この事件も、まわりに助けを求めなかったようです。そして、まわりも、手助けをしてる様子ではないです。やはり、被告は自分一人でできると思ったのが間違いであります。「娘に介護を任せて迷惑をかけるのは心苦しかった。」とありますが、傲慢でもあり優しさでもあり、いろいろ考えさせられます。娘も二人も何かできたはずですが、悔やんでも仕方ないです。3人がなくなったわけですが、やはり、裁判所も被告への同情もあり、18年。他の事件だったら、絶対、無期懲役か死刑です。
介護疲れ殺人は他の私利私欲の殺人より罪が軽いことに、異論はないです。ただ、小生は殺人や自殺には心情的に反対の姿勢を持っております。小生ごときが偉そうにすみません。記事を読んで、気を害された方がおられましたら、本当に申し訳ないです。失礼します。
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